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最高裁判所第一小法廷 昭和55年(行ツ)94号 判決

奈良市下三条町四九一番地

上告人

浅川ハーベストビル株式会社

右代表者代表取締役

浅川浩

右訴訟代理人弁護士

和島岩吉

大深忠延

奈良市登大路町八一番地

中村悟

被上告人

奈良税務署長

上田富雄

右指定代理人

小林孝雄

右当事者間の大阪高等裁判所昭和四八年(行コ)第七号法人税更正決定取消請求事件について、同裁判所が昭和五五年四月三〇日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人和島岩吉、同大深忠延、同中村悟の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができその過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に立って原判決を論難するものであって、いずれも採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 団藤重光 裁判官 藤崎萬里 裁判官 中村治朗 裁判官 谷口正孝)

(昭和五五年(行ツ)第九四号 上告人 浅川ハーベストビル株式会社)

上告代理人和島岩吉、同大深忠延、同中村悟の上告理由

第一点 租税訴訟物の釈明権不行使と審理不尽

原判決は一審裁判所の原告(控訴人・上告人)に対する租税訴訟物についての顕著な釈明権不行使の違法をそのまま容認ないし看過した違法があり、ひいては審理不尽の違法がある。この次第は次のとおりである。

一、原審は上告人(控訴人)の「本件各更正処分および再更正処分通知書に理由附記を欠く違法があるとの主張」については次のとおり判断している。

「本件各更正処分および再更正処分の通知書には、所得金額、留保所得金額、法人税額、納付の確定した当期分の基本税額、差引法人税額、重加算税額等の名欄に数額が示されているだけで、更正の具体的根拠の記載を欠いていることは、被控訴人の明らかに争わないところである。しかし、被控訴人が昭和三六年一二月二七日控訴人の昭和三三年度分以降の青色申告書提出承認の取消をするとともに、本件各更正処分をしたことは、当事者間に争いがない。そして、成立に争いのない甲第一号証および弁論の全趣旨に徴すると、被控訴人は、控訴人の備え付ける昭和三三年度分以前の帳簿書類に取引の全部または一部を隠ぺいしまたは仮装して記載する等当該帳簿書類の記載事項の全体について、その真実性を疑うに足りる不実の記載があると認定したので右取消処分に及んだものと認められるから、昭和四〇年法三四号による改正前の法人税法(以下「旧法人税法」という。)二五条八項後段により控訴人の本件各事業年度分の法人税にかかる青色申告書は、右不実の記載があったと認めれた時以後に提出したものとして(なお、最も古い昭和三三年度分についての申告日が昭和三三年一一月二九日であることは、当事者間に争いがない。)、青色申告書以外の申告書とみなされるのである。もっとも、前掲甲第一号証によれば、右青色申告書提出承認取消の通知書には「貴法人は、法人税法第二五条第八項第三号に掲げる事実に該当します」と記載されているだけで、右該当事実の具体的内容は摘示されていないことが明らかであって、右取消処分は違法であるといわなければならないが、無効であると解すべき根拠はなく、控訴人が右取消処分に対して不服の申立、訴の提起をしていないことは、弁論の全趣旨に徴し明らかであるから、右取消処分は確定したものと認められる。

このように、本件各更正処分および再更正処分はいわゆる理由附記を欠いているが、本件各更正処分は青色申告書提出承認取消処分とともにされているのであって、前記甲第一号証、いずれもその成立に争いのない甲第二号証の一ないし四、弁論の全趣旨によれば、右取消処分、本件各更正処分の各通知書は同時に控訴人に送付されたものと認められるから、このような場合取消処分が更正処分に先行してされたものと認めるのが相当であって(もっとも、控訴人は、右取消処分の通知書の番号が奈良法(通)第三六一号であり、昭和三三年度分の更正処分の通知書の番号が同第三六〇号となっていて、後者が前者に先行していると主張し、前掲甲第一号証、甲第二号証の一によれば右各通知書の番号が控訴人主張のとおりであることが認められるが、弁論の全趣旨に照らせば、右の番号は被控訴人内部の事務整理上のものにすぎないものと認められるから、これらの番号が叙上認定を左右するものということはできない。)、その通知を受けた控訴人は、青色申告書提出承認取消処分に対しては不服の申立をせず、本件各更正処分に対してだけ不服の申立をしたものであるから、控訴人は理由附記を必要としないいわゆる白色申告をしたものとみなされたものというべく、本件各更正処分に理由附記を欠くことによる暇疵は治癒されたものと解するのが相当である(なお、本件再更正処分については、青色申告書提出承認取消処分ののちにされたことが明らかであるから、もともと理由附記を必要としないものである。)それゆえ、控訴人の主張は採用することができない。」と判示している。

二、原判示は、上告人(控訴人)の本件各更正処分について理由附記不備の主張について、名を与えて実を奪うものである。

1 原判示が本件青色申告書提出承認取消処分は違法であるとしながら、「無効であると解すべき根拠はなく、控訴人が右取消処分に対して不服の申立、訴の提起をしていないことは弁論の全趣旨に徴し明らかであるから、右取消処分は確定したものと認められる」と判示されている部分はとうてい承服し難いものである。

なるほど、本訴状等を形式的にみる限り、「被告が昭和三六年一二月二七日付をもってなした原告の青色申告書提出の承認は、自昭和三二年一〇月一日至昭和三三年九月三〇日事業年度以降取消す処分はこれを取消す」旨が請求の趣旨として明示されてはいない。しかしながら、訴状においても甲第一号証を採用して、本件青色申告書提出書承認取消処分について明確に不服を申立てており、これをみると本訴のうち右処分の取消についても訴訟物として含まれていると解せられるのではないか。訴提起時における上告人(原告)の代理人である小西宜治弁護士は裁判官出身で奈良地方裁判所所長までされた方である。

同代理人が殊更に本件青色申告書提出承認取消処分を本訴から除外したとはとうてい考えられないのである。しかも本件青色申告書提出承認取消処分を含めて本件各年度更正処分につき、昭和三七年一月一〇日付で被上告人(被告・被控訴人)に異義を申立て、その異議が同年四月七日付で棄却され、これに対しさらに大阪国税局長に同年四月一〇日審査申立をなしたところ三ケ月間を経過しても何らの審査裁決がないため、同年八月二二日本訴に及んだというわけである(甲第三号証ないし一〇号証参照)。審査決定がなされたのは昭和四〇年六月九日付である。三事業年度における更正処分の一部について取消されたものの、本件青色申告書提出承認取消処分の審査請求は棄却された。

右経過に照らし、原判示が上告人(原告)として右取消処分に対し不服の申立をしていないことは弁論の全趣旨に徴し明らかであるとしているのは誤りである。

2 上告人が本訴の請求の趣旨として本件青色申告書提出承認取消処分の取消請求を明示していないから本訴の訴訟物として取扱うには疑問があるというのであれば、裁判所として当然その訴訟物の付加明示を求めるなど釈明させる義務があるものと考える。

本件青色申告書提出承認取消処分について出訴期間を考えてみるのに、審査請求の棄却日が前記のとおり昭和四〇年六月九日であるから、それからでも三ケ月間の出訴可能期間があった。本訴提起日が昭和三七年八月二二日であって、その間一審奈良地方裁判所において八回の口頭弁論期日が開かれている。第七回口頭弁論期日には、被上告人(被告)の方で審査決定を早急にしたいと陳述しており、それまでの期間は被上告人の方の主張・立証整理期間に費されたとも考えられる。

上告人において、本件青色申告書提出承認取消処分が訴訟物として明示されておれば、本件各更正処分及び再更正処分は理由附記不備として違法とされることは原判示も認めている。してみると、上告人(原告、控訴人)の申立は認容するべきところ、上告人が明らかに誤解または不注意で請求としての明示を欠く場合、裁判所の釈明権の行使が期待されるべきである。本件における釈明権不行使は、判決に影響を及ぼすべき法令の違背といわねばならない。(なお、現時点においても本件青色申告提出承認取消処分の取消の提訴が適法というのであれば、本上告理由書において前記文言のとおりこれを付加明示するものである。)

第二点 旧法人税法九条一項違反

一 原判決は、上告人が本件各更正処分および再更正処分は旧法人税法九条一項に違反すると主張している点につき、「旧法人税法九条一項は「内国法人の各事業年度の所得は、各事業年度の総損金を控除した金額による。」と規定しているところ、被控訴人は控訴人の別口利益金が各事業年度の総益金に含まれるとして所得金額を算出し、本件各更正処分および再更正処分に及んでいることが明らかであるから、右所得金額の算出方法に同条に違反する違法があるということはできない。」と判示している。

右法人税法の規定は法人の所得は損益金(損益計算書)に依って把握されるべきことを明らかにしている。(このことは昭和二四年七月九日、公表された大蔵省企業会計審議会中間報告による企業会計原則にも明示されているとおりである。)

しかるに被上告人は、財産法(期首と期末の資産の増、負債の減)に基づいて簿外の売上金を推認し、さらにこれを別口利益金として把握している。

原判決は被上告人の主張をそのまま是認している。

なお、被上告人は、乙第二八号証の一として中井英一作成の損害計算書なるものを提出しているが、昭和三三年度についてのみであって、しかも、その内容は損益計算書の体をなしているとはとうてい言えないものであることを付言しておく。

原判示には、右の点において判決に影響を及ぼすべきこと明らかな法令の違背がある。

二、原判決には、被上告人が上告人に対してなした昭和三三事業年度分(自昭和三二年一〇月一日至昭和三三年九月三〇日)と昭和三四事業年度分(自昭和三三年一〇月一日至昭和三四年九月三〇日)の各更正処分につき、各事業年度外の預金ないし預金利息を別口利益金として認定している点において、同じく旧法人税法九条一項に違反している。即ち、

1 浅川実は、個人として、昭和三二年八月三〇日現在において、南都銀行本店において左記七口の定期預金を有していた((甲第二二号証)

預入年月日 名義 番号 期間 金額

(1) 昭32・5・25 無記名 二九三 一年 一〇〇万円

(2) 同5・23 若山健介 AR五五七八 同 五〇万円

(3) 同 若山妙子 同 五五七九 同 同

(4) 同 秋月圭介 同 五五八〇 同 同

(5) 同 4・22 秋月妙子 同 五五八一 同 同

(6) 不明 石平勝蔵 AT九二四八 同 三〇万円

(7) 不明 北原大造 AR五八三一 同 一〇〇万円

右の定期預金は昭和三三事業年度以前に発生したものであることも明らかである。右の定期預金の定期利息も当然昭和三三事業年度以降の別口利益金として把握されてはならないものである。

さらに、右の(1)ないし(5)の預金は、昭和三三年六月五日秋月圭介名義一本で統一され、三〇〇万円一年の定期預金で継続し、その後も、昭和三四年六月一二日(起算日六月五日)秋月圭介名義他九口各三〇万円の一年定期預金で、さらに昭和三五年六月五日同じく秋月圭介名義他九口各三〇万円の半年定期として推移継続している(甲第二三号証)。

田口明宏名義の普通預金(以下、田口普通預金という)の昭和三三年六月七日入金一八万円の預金源(乙一一号証・同二〇号証の一)は、右の定期利息である。当時の一年定期の利息は年六分であった。それは、定期預金の満期日と田口普通預金、預金預入日、定期利息と普通預金の預入金額の各相応性で推認できるし、さらに右(1)ないし(5)の定期預金は前述のとおり、秋月圭介一本で統一されて、継続していることから、定期利息も一本化していることは十分考えられ、定期継続日と、田口普通預金一八万円預入日は、近接していることが容易に推認できる。(甲第二三号証、乙地一一号証、同第二〇号証の一)

同じく、田口普通預金への昭和三四年六月一二日預入の一八万円は、右三〇〇万円の定期利息である(乙第二〇号の証の二)。

2 次に、田口普通預金の昭和三三年七月九日入金一一万三〇四円(乙第二〇号証の一)について検討してみると、これは浅川実個人が昭和三二年七月一日無記名でなした一年定期預金一八〇万円の利息である。当時一年定期の利率が年六分であったことは前述したが、右定期預金は昭和三三年七月九日再度預入れて継続しているが、満期から継続までの利息を付加すると、一一万三〇四円となると考えられる(甲第一七号証、乙第一一号証、同七号証)。同じ根拠から田口普通預金昭和三四年七月二九日の一一万三一八円も右一八〇万円の定期利息である。

右無記名定期一八〇万円について、右預金は昭和三二年七月に無記名定期預金として預け入れられたものが、昭和三三年七月切換え継続されたものであって(乙第七号証参照、この預金は昭和三四年七月再々度切換え継続のさい浅田広明外四口の架空名義預金になっている)、いずれにしても昭和三三年事業年度中に発生した別口利益でないことが判明したので、審査決定でその全額が取消されているのである(一審中井証言録一八枚目、二三枚目)。被上告人が一審における第三回準備書面一(二)、第一一回準備書面一(二)で自認しているところでもある。

3 田口普通預金の昭和三三年九月一六日の摘要欄に定期利息と書いて三万一六〇円の預入が記入されている(乙第一一号証、同第二〇号証の二)。同年同日に秋月金雄名義の五〇万円の定期預金がなされている。右の定期利息は五〇万円の定期利息と考えられる。とするとその五〇万円は昭和三二年九月一六日以前になされていたことは明らかである。被上告人も協議団調査の段階で秋月金雄の定期利息が田口普通預金の入金に含まれているという意味の相関関係があることを認めている。

むしろその相関関係があるからこそ秋月金雄名義の定期預金は、上告人のものと認めたと主張し、その趣旨で立証している(被上告人一審第四回準備書面(一)(1)、乙第六号証、中井証言録一審一一枚目裏)が右のとおり秋月金雄名義の五〇万円は昭和三二年九月一六日以前から存在していた金員が、名義を変えて右定期預金に継続されたものであることが推認され、昭和三三年九月一六日新規に秋月金雄名義で定期がなされているからといって、昭和三三事業年度の上告人の別口利益金としたのは誤っているのである。この五〇万円及びその定期利息三万一六〇円もまた昭和三三事業年度の別口利益金でないことは明らかである。同じ根拠から、田口普通預金昭和三四年九月一八日預入六万三二八円の中に、右五〇万円の定期利息三万円なにがしが含まれている(前掲中井証言録一一枚目)。同じく、同預金昭和三三年八月三〇日預入の八万五〇〇〇円の中には前記(一)(6)(7)の一三〇万円に対する定期利息七万八〇〇〇円が含まれていたことが推認され、昭和三四年九月二日七万八〇〇〇円の預入はその一三〇万円についての年六分かっきりの定期利息七万八〇〇〇円であると思料される。

右にみたとおり、田口普通預金の入金源に関連する定期預金の元本ないし利息金の推移をみるとき、昭和三三事業年度分については、

(180,000+110,304+30,160+500,000+78,000)=892,464

計八九万八、四六四円

昭和三四事業年度分については、

(18,000+113,184+30,000+78,000+)=401,184

計四〇万一、一八四円

少なくとも右各々の金額が各年度における上告人の別口利益とは無縁であることが判明した。これは上告人の別口所得から除外されねばならない。

第三点 事実認定の経験則違背、理由不備等

原判決が、上告人につき被上告人が主張するとおり、本件各事業年度において別口利益があると認定したのは著しく経験則に反した事実認定であり、また理由不備の違法がある。

一、原判決は、まず次のとおり判示している。即ち、

「控訴人は、控訴人経営の奈良観光ホテルは主として団体旅行客を宿泊させていて、飛び込みの宿泊客が少なく、その立地条件も悪いから、とうてい被控訴人主張のような簿外の利益を上げることはできないなどと主張するが、いずれもその成立に争いのない乙第二九号証の一、二、第四一号証の一ないし三、原審証人嶋仲尊男、当審証人藤原晃、同浅川浩の証言、原審における控訴人代表者尋問の結果(証人浅川、控訴人代表者の供述中後記認定に反する部分は採用しない。)によると、奈良観光ホテルのある国鉄奈良駅前という立地条件は、近時私鉄やバスを利用する観光客が増加し、国鉄利用客が減少したことに伴って、旅館業者にとり必ずしも有利なものとはいえなくなっているが、本件各事業年度当時としてみると、奈良観光ホテルは奈良市内の同業者間にあって中位のものと目されていて、国鉄推せん旅館、日本交通公社協定旅館とされていたし、その経営は主として団体旅行客を対象とはしていたが、小口の一般旅行客も少なからずあったことが認められるから、控訴人の主張は採用することができない。控訴人は、次に、控訴人が被控訴人主張のような所得をあげていたとし、「中小企業の経営指標」記載の営業利益率により逆算すると、例えば昭和三三年度においては三〇、一三八、七三九円という簿外売上があったことになって非常識であるというが、控訴人主張の利益率が本件に妥当するという根拠が明らかでないから、右の主張も採用できない。控訴人は、さらに、売上高に対する材料仕入費の割合にもとづいて甲第三号証一ないし四中の損益計算書の正確性ひいては本件更正処分等の更正の根拠のないゆえんを主張するが、控訴人が仮名の預金を有していると認められる等の上記の事実と対比すると控訴人が援用する右損益計算書の記載自体の正確性に問題があるといわなければならないから、控訴人の主張は前提を欠くといわざるをえない。」

右判示のうち、「当審において新たに浅川実に帰属するという七口の合計四三〇〇、〇〇〇円の株式会社南都銀行本店の定期預金口座の存在を主張し、いずれもその方式および趣旨により成立を認められる甲第二二、第二三号証によれば控訴人主張名義の定期預金が存することが認められ」としており、この事実は先に上告理由第二点の二で論じたことに関し重要な事実であるとともに、本件別口預金の帰属認定にも同よう重要な意味をもっていることは明らかである。

被上告人の本件各更正処分および再更正処分の正当性についての主張・立証がいかにも観念的、抽象的で説得力を欠くことは、原審において十分論述したところである(原審第一回準備書面参照)。原判示の仕方そのものが上告人の主張を正面から取り上げられず、まるで本件各更正処分および再更正処分の不当性の主張・立証責任を上告人に負担させる形の論理展開がなされているが、事実認定の視点として誤っていると考えられる。

二、次に、原判決は前掲のとおり「控訴人は、また、当審において新たに浅川実に帰属するという七口の合計四、三〇〇、〇〇〇円の株式会社南都銀行本店の定期預金口座の存在を主張し、いずれもその方式および趣旨により成立を鉄められる甲第二二第二三号証によれば、控訴人主張名業の定期預金が存することが認められ」と判示したうえで、「当審証人浅川浩の証言中には、控訴人の主張にそう供述があるが、昭和三七年提訴にかかる本訴において控訴人が右の定期預金に言及したのは昭和四九年二月一五日付準備書面が始めてであること、その他前認定事実と対比して、右供述はにわかに採用することはできない」と述べているのは、上告人の主張に対する明らかな判断回避であって、判示の意味は不明である。この点において原判示には理由に不備があるものである。

よって、原審の事実認定は再検討されるべきである。

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